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双極性障害は、躁状態と抑うつ状態を周期的に繰り返す気分の疾患です。
うつ病とは治療法が異なるため正確な鑑別が極めて重要で、近年は「双極症」「双極スペクトラム」という概念で、より幅広い病態を捉える方向に議論が進んでいます。
双極性障害(医学的には双極症/Bipolar Disorder)は、躁状態またはそれに準ずる軽躁状態と、抑うつ状態を生涯のなかで繰り返す気分の病気です(APA, 2022)。
躁状態とは、気分の異常な高揚、活動性の亢進、睡眠欲求の減少、多弁、誇大的な思考、注意散漫、無謀な行動などが少なくとも1週間続く状態を指します。
軽躁状態は同様の症状が少し弱く、4日以上続いた場合に診断されます。
「躁状態を伴うか/軽躁にとどまるか」によって、双極I型(躁状態あり)と双極II型(軽躁状態と抑うつ状態の繰り返し)に分類されます。
「気分が上がる病気」と誤解されがちですが、実際には抑うつエピソードの時間が躁・軽躁エピソードの時間より圧倒的に長く、患者さまご本人の主観としては「うつの病気」として体験されることが少なくありません。
双極I型の生涯有病率は約0.6〜1%、双極II型は約0.4〜1.1%、閾値下の双極スペクトラムを含めると約2〜5%に達するとされます。
発症年齢の中央値は約20歳前後で、うつ病より若年発症の傾向があります。
問題は、双極性障害の方の多くが最初「うつ病」として治療を受け始める点です。
正しい診断まで平均8〜10年を要するとの報告もあり、治療の遅れは再発の増加、認知機能の低下、自殺リスクの上昇など予後の悪化につながります。
「うつ病として治療しているが抗うつ薬の効果が乏しい」「抗うつ薬を増やしたら急にハイテンションになり、眠らなくなった」「20代以前から好調期と不調期を繰り返してきた」という方は、双極性障害の可能性を検討する必要があります。
双極性障害のうつ状態は、うつ病と比べて過眠、過食、鉛様麻痺、拒絶過敏性などの「非定型特徴」を伴いやすいことも知られています。
双極性障害は精神疾患のなかで最も遺伝要因が大きい疾患の一つで、第一度親族の罹患リスクは一般人口の約5〜10倍とされます。
病態としてはドパミン系・グルタミン酸系の機能変化、細胞内カルシウムシグナリングの異常、概日リズム関連遺伝子の関与などが報告されています。
発症の引き金として、ライフイベント、睡眠覚醒リズムの乱れ、アルコールや覚醒系物質の使用、抗うつ薬単独治療による躁転などが重要です。
急性期治療でエピソードを終息させても、維持治療を行わない場合の1年再発率は約50%、5年では約70〜90%に達します。
自殺リスクは一般人口の約15〜20倍と高く、適切な治療の継続が極めて重要です。
気分安定薬の代表はリチウム、バルプロ酸、ラモトリギン、カルバマゼピンです。リチウムは長期予後改善と自殺予防効果が示されており、適切なモニタリングのもとで第一選択となります(Cipriani et al., BMJ, 2013)。
ラモトリギンは双極性うつ病や維持期の抑うつ予防に有効です。非定型抗精神病薬(オランザピン、アリピプラゾール、クエチアピン、ルラシドン等)も広く用いられます。
重要な点として、双極性障害のうつ状態に対する抗うつ薬の単独使用は躁転・急速交代化のリスクを高めるため推奨されず、気分安定薬等と併用するか単独使用を避けることが原則です。
薬物療法に加えて、認知行動療法や対人関係社会リズム療法(IPSRT)など、双極性障害に対する精神療法の有効性も報告されています。
睡眠リズムを一定に保つ、ご自身の発症パターンを知り、前駆症状(短時間睡眠でも平気・買い物の増加・多弁など)を早めにキャッチするといった、日常レベルの工夫が再発予防に役立ちます。
初診時に過去のエピソード歴・家族歴・物質使用歴・睡眠覚醒パターンを丁寧に伺います。
ご家族からも情報をいただけると、より正確な評価につながります。
治療は気分安定薬を中心に、エピソードの極性・頻度・合併症・妊娠可能性などから個別化し、リチウム使用時は血中濃度・腎機能・甲状腺機能の定期検査を行います。
診察のなかでは、症状の波と生活イベントの関連、ご自身の発症パターン、前駆症状の見つけ方、睡眠リズムの整え方などを整理してまいります。
より専門的な治療が必要な場合は、それを提供できる連携医療機関へのご紹介も行います。
以下のようなパターンに心当たりがある方は、ご相談ください。
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双極性障害は、正しく診断され適切な治療を継続できれば、長期にわたり安定した生活を送れる病気です。
「うつ病だと思っていたが何かが違う」と感じる方は、ぜひ一度ご相談ください。