パニック症は「突然の激しい不安発作」と「次の発作への予期不安」によって、行動の自由が少しずつ制限されていく病気です。
「死んでしまうのではないか」という恐怖は、ご本人にとっては紛れもなくリアルな体験です。
パニック症(Panic Disorder)は、繰り返し起こる予期しないパニック発作と、発作の再発への持続的な懸念(予期不安)、発作が起こりやすい状況の回避によって特徴づけられる疾患です(APA, 2022)。
パニック発作は、動悸、息苦しさ、めまい、発汗、震え、胸部不快感、吐き気、現実感の喪失、死の恐怖などが数分以内に最高潮に達する急性の発作で、通常は10〜30分で自然に治まります。
しかしご本人には「死ぬかもしれない」と感じるほどの体験であり、発作後も「また起きるのではないか」という予期不安が日常生活を制限します。
電車・バス・人混みなど「逃げにくい状況」を避けるようになる広場恐怖症を合併することもあります。
12か月有病率は約2〜3%、生涯有病率は約4〜5%で、女性は男性の約2倍、20〜30代での発症が多いとされます(Kessler et al., 2012)。
診断には、発作が繰り返し予期せず起こり、発作後1か月以上にわたって、再発への持続的な懸念や、発作に関連した行動の変化(回避など)が続くことが必要です。
広場恐怖症の合併は約30〜50%にみられ、うつ病や他の不安症、アルコール問題の併発率も高いことが知られています。
動悸や胸痛のため循環器内科などを先に受診し、「検査では異常なし」と言われて悩まれる方も少なくありません。
病態には、扁桃体を中心とする恐怖回路の機能異常や、セロトニン・ノルアドレナリン・GABA系の調節異常が報告されています(Gorman et al., 2000)。
心理学的には、身体感覚を「危険のサイン」と解釈してしまう破局的認知が、発作の維持に中核的な役割を果たします(Clark, 1986)。
「動悸がする→心臓発作だと思う→恐怖が増す→症状がさらに悪化する」という悪循環が、発作の急激な増幅を生み出します。
この仕組みを知ること自体が、治療の大切な第一歩になります。
SSRIを中心に、症状の重症度、副作用、併存症を踏まえて個別に選択します。
効果発現には2〜4週間、十分な評価には8〜12週間程度を要し、開始初期に不安が一時的に強まることがあるため、低用量から慎重に開始します。
ベンゾジアゼピン系抗不安薬は発作時の頓服として短期間用いることがありますが、長期連用は依存のリスクがあるため最小限にとどめます。
認知行動療法(CBT)は薬物療法と並ぶ第一選択で、呼吸法、身体感覚への慣れの練習、認知再構成などを組み合わせ、高い効果と再発予防効果が報告されています(Sánchez-Meca et al., 2010)
初診時に、発作の頻度・症状・起こる状況、予期不安の程度、回避行動の範囲、広場恐怖症や他疾患の合併を評価し、必要に応じて心臓や甲状腺など身体疾患の除外を行います。
発作時の対処(呼吸の整え方、頓服薬の使い方、「発作は必ず治まる」という理解)を初回からお伝えし、「次の発作が来ても何ができるか」を一緒に整理することを大切にしています。
薬物療法はSSRIを少量から開始し、診察のなかで予期不安への対処や、回避している状況の段階的な再開を継続的に扱います。
より専門的な認知行動療法が必要と判断される場合は、それを提供できる連携医療機関へのご紹介も行います。
以下のような体験のある方は、ご相談ください。
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パニック症は、適切な治療で発作の頻度を大きく減らすことができ、予期不安や回避行動からも段階的に解放されていく病気です。
「自分の心の弱さ」ではなく「治療できる状態」として、一緒に取り組んでいきましょう。